佐賀
きょうは初対面の人との飲み会があって、そういう場ではたいていどこ出身かという話になるものなのだけれど、わたしはこの話題がすこし苦手で、いつもちょっと困ってしまう。わたしが素直になんのひねりもなく、佐賀出身です、というと、絶対に「佐賀!遠いね!」という反応が返ってきて、次に「佐賀弁喋ってよ〜」または「佐賀って何があるの?」という話題になる。相手もとてもピュアな好奇心で聞いてくれているのだけれど、わたしは方言は急に話せないし(方言はその人に染み付くものというよりは、関係性によって生じるものだとおもう、方言で相手が話すから、わたしも方言で返すのだ、その地域でのルールのひとつ、という感じがしている)佐賀に何があるのか、という質問は、「あ〜!あったね!(知ってる知ってる!)それ佐賀なんだ〜」という絶妙な驚きがあるものが好ましいと思うのだけれど、そういう観点で言えば佐賀には全く何もない。面白おかしく話せることが何もなくて、それでわたしは「方言は話せないし、佐賀にはとくに何もないんですよね」とあいまいに笑うしかない。
佐賀にあるのは広い空とまっすぐな地平線、電線、きらきらの田んぼ、籾殻を焼く匂い、学ランで立ち漕ぎをする中学生、夕暮れ、目を細めて遠くに見るバルーン、潮風で錆びた古いトタンとか、雑な処理の空き地や舗装されていない堀や、そういうもので、人口が少なく家が密集しているから、田んぼの近くはどこまでも田んぼしかない。とっても広くて風の音しかしない静かで美しい空間を、ひとりじめできるのがいちばんの佐賀の良さだと思っていて、佐賀のそういうところが大好きなのだけれど、なかなか初対面の人と、飲み会の席ではうまく話せる感じがしなくて、むずかしいなと毎回思う。
山の起伏や森林があって佐賀の広さとは全然違うのだけれど、物の古さやひと気のなさ、雑さに佐賀に似た寛容さを感じて、大学は第二のふるさと……というふうに勝手に思っています。
佐賀は遠いしなかなか帰る機会もないので、そういうふうに思える場所が身近な距離にあることは、とても幸せなことだなと思います。
あしたはちひろちゃんです!
∞ ∞ ∞ ∞ ∞
余談ですが、
母の車に乗ると小さい頃から今もずっとUAの「11」というアルバムが流れていて、佐賀の田んぼや空を見るとUAを、UAを聴くと佐賀の田んぼや空を思い出すというふうになってしまって、だからたまに通勤中にUAを聴くと、自分はいま佐賀にいる、という気分になるのにまわりの風景は佐賀じゃないので、すごく不思議な感じがします。