行きたかったラーメン屋が閉まってた
ふと、友人に教えてもらったラーメン屋に行こうと深夜1時に思い立った。バイト終わりの深夜に友人がよく食べに行くらしい。場所は家の近くなどではまったくないので、わざわざ車に乗って行く。どうしても食べたい気分になったから仕方がない。
そのラーメン屋は階段を降りた地下にある。お腹が減ったと思いながら階段を降りたら、本日休業日の文字。なんと店が閉まっていた。わざわざ暑い外に出て、わざわざ車に乗ってきて、これではあんまりだ。非常に残念な気持ちで戻ろうとしたら、ふと気付いた。美味しそうな匂いが漂ってくる。ラーメンの匂いだった。
きっと仕込みでもしてるのだろうと思った。もちろん入れないだろう。閉店中だし。だが、なんとなしにドアノブを回してみた。開いた。
「イラッシャイマセー」
普通に歓迎された。少し薄暗いカウンター席の向こうに、店員らしき人がいる。
「スキナトコニドウゾー」
「あ、はい」
おもての札が逆になっていたのかもしれない。店内には誰もいなかったので、カウンター席の真ん中に座った。ずいぶん小さい店で、カウンター席が3つしかない。もっと広いイメージがあったが。
メニューを見ると、真ん中に1つ、品名らしきものが書かれてるだけだった。文字が少しかすれていて読めない。友人が、味噌ラーメンがうまいと言っていたからたぶん味噌ラーメンだろう。それを指差し、じゃあこれで、と言った。アイヨー。店員は外国人なのだろうか。薄暗くて顔がよく見えず、わからない。
たいしてかからずラーメンは出てきた。とてもいい匂いがする。チャーシューとなにやら野菜がのっているのだが、なんの野菜だろう。切ってあるにしろ、見覚えがなかった。ひとまずスープをすくい、口に運ぶ。
めちゃくちゃうまかった。だが味噌ラーメンではなかった。なんの味かわからなかった。濃いめのスープには、なにやらのダシがしっかり感じられる。何のダシかもわからない。おいしい。
これはなにラーメンなんだろうとメニューを見るが、やはり読めない。まあ美味しいからいっか、と麺を啜る。おいしい。太めの縮れ麺が濃いめのスープとよく絡んでいる。合間に口に運んだ野菜は、ほどよくしゃきしゃきと音を立てる。おいしい。なんの野菜かは食べてもわからない。チャーシューはたぶん普通のチャーシューだった。おいしい。
あっという間に食べ終わる。おいしかった。
「お会計お願いします」
「600円デス」
そういえば金額を確認してなかったが、思ってたより安かった。また来ようと思いつつ、店を出る。
「ごちそうさまでした」
「アリガトゴザイマシター」
後日、友人と一緒に再び行ったが、まったく別のラーメン屋になっていた。味噌ラーメンはおいしかった。